水もれの音
October 16,2022
目の前でおしゃべりをしている彼女は
とても楽しそうに活発そうなんだけど。
でも、どうしてだろう。
なんとなく話が耳に入ってこない。
それはまるで、家の中のどこからか聞こえる
水もれの音をかき消すように。いや、知っていてもわざわざ
聴こえないように自分で出している音の集合体みたい。
だから。
私は水もれの音が気になっている。
本当の音はなんだろう。
彼女の本当の音は‥‥。
少しだけ、私の耳を開いてみる。
「泣いてもいいんだよ」
ふと、そう言葉が出てしまった。
笑うかと思ったら、彼女は瞬間的に泣いた。
開いたままの瞳から涙の玉がポロポロこぼれて。
水もれが決壊(笑:
「嘘でしょう〜」って言いながらポロポロ。
水もれの正体「流せていなかった涙」は
綺麗にちゃんと流れていったよ。
そして涙はおしゃべりだった。
彼女が本当に話したいことを代わりに喋ってた。
涙は体の中から出てきた真実だから。
(イミテーションの涙はまた別物で読解不能w)
そうね、願わくば私の前以外でも泣けるといいな。
一人で泣かないで。
喫茶店でもいいからさ、誰かがいる
空間で涙を人知れず流すでもいいから。
一人で泣く時間は終わったと、きっと
涙の蛇口を閉めてしまったあなただからこそ。
その効果を、私は知っているよ。
そうしていつか涙が止まった頃
今度は、あなたの音がちゃんと聴けますように。
きっと心から笑ってる、色彩豊かな音の
おしゃべりを楽しみにしている。